名刺にまつわる失敗談

社会人になって30年になる

■男性歳 53

社会人になって30年になる。会社に入って初めて自分の名刺をもらったときは理由もなく誇らしげに思ったことを思い出す。

でも内勤職務だったため、なかなか名刺交換する機会には恵まれなかった。それでも名刺交換する時が来た。上手くご挨拶ができるかと緊張したが、何となくやり過ごすことができた。そのうち慣れてくると、名刺を出して言葉をなんとなくモゴモゴ言っていたら済むのではないかとナメ始めていた。そして交換の時、相手の名刺を引っ張るようにして受け取っていた自分に気づき、ご挨拶もそうだが相手との距離感を大切にするようになった。
ある時、人事異動があり自分の荷物を片付けることになった。廃棄するものは廃棄して、身のまわりをキレイにしようとして掃除をしていたとき、上司に呼び出された。怒っている声だ。緊張しながら上司の下にいくと、ゴミ箱を指さして「名刺を捨てるとはどういうことだ!」と怒られた。私が「部署が変わることがわかったので、もういらないかと思い捨てました」と応えると、「それは知っている」と。まったく意味がわからずにいると、名刺をただ破棄したことに対して怒られていることに気づいた。
シュレッダーを掛けないと悪用されるかもしれない、ましてや同じ名刺をたくさん持っていると言うことは、その本人の可能性が高いことになる、ということだった。確かに、一枚だけなら他人からもらったかもしれないが、瑕疵のない名刺を数枚持っていたら、それはその名刺の本人になりすませることができるのだ。その時、社会人は深いと感じた。今から二十数年前の話である。

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